2016年度大学選手権

日付 12/11 12/17 1/2
3回戦 準々決勝 準決勝
相手 中央大 早稲田大 東海大
スコア 42-3
28-3
14-0
47-31
33-0
14-31
12-74
12-40
0-34
場所 花園 花園 秩父宮
1 趙C 田中@ 趙C   趙C 土田B
2 中尾C 平川A 中尾C   中尾C 山崎B
3 海士C 土田B 海士C (土田B) 海士C 石橋B
4 山田C   山田C   山田C  
5 堀部@ 戎C 堀部@ 戎C 堀部@ 戎C
6 丸山B    丸山B    丸山B   
7 野中B   野中B   野中B  
8 末永C 秦C 末永C 秦C 末永C 秦C
9 大越C 三木C 大越C 三木C 大越C 三木C
10 永富健CK 小林C 永富健CK   永富健CK  
11 佐藤C   安田A 佐藤C 安田A  
12 永富晨A   永富晨A   永富晨A  
13 石田C   石田C   石田C  
14 松井C 山口A 松井C 山口A 松井C 小林C
15 安田A   崎口C 小林C 崎口C 佐藤C

 

東海大学戦 2017/1/3記


選手、スタッフはよく頑張りました。ここからは、大学が頑張る番です。


秩父宮で、同志社vs東海、天理vs帝京の二試合を見ました。
会場入りする際に、東海大の選手を見かけました。体の大きさよりも気になったことがありました。多くの選手がマスクをしていたことです。あくまで決勝に照準を合わせているようで、直感的に嫌な気がしました。

一試合目は、観戦が辛い試合でした。同志社の選手、スタッフの与えられた環境を恨むことのない健気な頑張りを知っているということが背景にあります。けれど、それだけではありません。ラグビーにおいて、体の小さいチームがフィジカル差のある相手に果敢に挑むのを見る絶望感です。同志社は工夫して攻めていました。押し返されても、我慢して我慢してフェーズを重ねるほどに、フィジカルの差が出ました。最後は必然的に生じる数的劣勢とそれによるミスから、ターンオーバーされ、あっという間にトライを決められていました。前半で、彼我の力の差を確かめた東海は、ディフェンス時は競って来ませんでした。同志社に攻めさせ、BKを巻き込んだところで、ターンオーバーを仕掛け、ボールを奪うとミスマッチのディフェンスラインを破って、BKが独走です。フェーズは重ねますが、善戦しているのではなく、遊ばれている状態です。完膚なきまで叩きのめされるとはこういうことをいうのでしょう。前半のミスのせいという意見もありますが、個人の問題ではなく、圧力を受けてのプレーの影響です。

二試合目は、対照的でした。後半に点差はつきましたが、面白い試合でした。フィジカルは帝京が優勢ですが、それほどの差は感じません。両チームともに、タックルがよく、リロードも早いため、数的優位を一方が作ることなく、拮抗した試合になりました。後半はケレビ頼みになってしまった場面もありましたが、関西のチームでも大学日本一に近いところまで来ていることを感じさせてくれました。

この二試合の試合内容をしっかり把握することが、同志社が日本一を目指す上では、重要と考えます。


同志社は、四回生の世代は、近年稀に見るリクルートに成功した年です。それも、セレクション制度の改善というより、OBの個人努力によるところが大きいです。現制度ではこれ以上は望めないほどの結果です。つまり、このシーズンの選手のポテンシャルは前後3-4年でピークです。それだけに絶対に勝たないといけないシーズンでした。11年ぶりのベスト4は十分に価値がありますが、上位3位とは大きな壁のある4位です。組み合わせ次第では、ベスト4入れなかった可能性もあります。問題は、これでよいと考えるか、日本一を目指すかです。私は後者を希望しますので、以下はそのための意見です。

今シーズンは、最高のリクルートと、それに照準を合わせて、最高のスタッフが揃いました。大西氏、太田氏、仙波氏は、いずれもトップリーグでの主力選手でした。萩井氏は関学を関西優勝に導いた監督です。加えて、34名にも及ぶ学生スタッフ。これだけのスタッフは他校では考えられません。OBと学生スタッフが融合して、現制度でできる最高の準備で迎えた選手権です。それでも、歯が立たなかったということは、根本的に見直す必要があると考えます。


1、フィジカル強化
フィジカル強化の改善には、トレーニング、栄養、休養の三大要素を見直す必要があります。現行の18〜19時スタートの練習後のフィットネスでは、15〜16時から練習を始めるチームには太刀打ちできないと断言できます。19時は帝京や東海では、練習を終えて栄養摂取を開始する時間です。22時ごろからの食事では、睡眠不足で疲労が翌日に残り筋力アップどころか、筋力低下になることは科学的にも証明されています。努力するほどに弱くなる、「効率の悪い頑張り」です。授業の空き時間に各自でウエイトトレーニングも行っているようですが、前後に栄養補給ができているかが問題になります。
精神論ではフィジカル強化はできません。帝京との4時間差は致命的ですが、少なくとも練習開始を3時間早める必要があります。これは、将来有望な選手を預かるチームとしては、義務です。一刻の猶予もありません。すぐにでも実行してもらいたいです。帝京やエディージャパンを例に出すまでも無く、本当はこれでも足りないくらいです。実力が劣っている方が、たくさん練習しないと追いつけません。

講時 授業時間 グランド到着時刻 
1 9:00〜10:30  
2 10:45〜12:15 14:09
3 13:10〜14:40 16:29
4 14:55〜16:25 18:13
5 16:40〜18:10  19:58
6 18:25〜19:55  
7 20:10〜21:40  
大半の学生が授業のある今出川で、4講目を終えて京田辺キャンパスの一番奥まで移動すれば、19時近くになってしまいます。近鉄興戸駅からグランドまで2.9kmを徒歩40分とした場合には1時間半かかります。今出川の授業は3講時で切り上げ移動すれば、16時半に練習開始出来ます。京田辺なら、4講目まで受けられます。

「ラグビー部員である前に同志社大の学生」
中尾GMの監督時代のお言葉です。2007年の事件の教訓もあり、しっかり授業を受ける姿には、感銘すら受けられます。以前より留年者も減りました。しかし、彼らにとっては、クラブ活動は学業以上に大切な学生生活です。ひたりきってこそ、得られるものも大きいです。

2、食の充実
食はフィジカル強化の3要素の1つですが、別途取り上げます。アスリート食、OBによる鍋など、努力されています。しかし、トップアスリートの食事としては、まだまだ不十分です。栄養学は日進月歩です。2〜3年の常識が、今の非常識もあり得るそうです。常に勉強して、最新の技術を取り入れないと、ついて行けません。大学側が本腰を入れないと、関西の天理以外の大学にも勝てない時代がきます。

3、専任コーチ
チームを通して指導できるフルタイムコーチが必要です。山神監督と大西コーチが、ほぼ毎日指導してくれました。しかし、二人ともサラリーマンで、指導は手弁当です。四六時中ラグビーのことを考えている訳にはいきません。中尾元監督は直接指導されておられませんので、フルタイムコーチが不在です。加えて、大学側に意見を言えるという意味でも、職員ではなく、大学教員の指導者が望まれます。

4、人材確保
セレクション枠(スポーツ推薦)は7名(スポーツ健康学部2、商学部2、社会学部3)です。枠数が多いか少ないかはここでは言及しません。
他校ではスポーツ推薦入学者は学費全額相当の奨学金を設けているケースも少なからずありますが、それがありません。競技にはお金がかかるので、トップアスリートが志望しにくい傾向にあります。まして、入学後の環境が1で書いた状況で、世界を目指す選手に敬遠されてもおかしくありません。
帝京はセレクション枠30名強で、部員の学費は全額負担とのことです。早稲田はセレクション枠は数名とのことですが、トップアスリート枠があります。
同志社は部員数は、施設やコーチ数のキャパシティーからは、140名近い選手数は多いように思います。実態はわかりませんが、合理的に考える必要があります。ちなみに、帝京でも、選手は以前は150人いた部員を現在は140人程度に抑えているそうです。
同志社ではスポーツ健康学部に協力してもらって、この学部の枠を1つでも2つでも、増やしてもらうことが現実的かもしれません。セレクションが難しければ、指定校やAOで良いのかもしれません。京田辺が本拠地のため、スポ健の学生は移動時間の問題がありません。

5、留学生
留学生については、意見が分かれるところでしょう。ラグビーを目的としたプロ助っ人に近い意味合いの留学生には抵抗があります。しかし、日本のラグビーを前に進めてくれたのは、高校、大学、社会人、代表に籍をおいた外国人選手たちであるのも事実です。平尾誠二さんも、日本人選手への効果を言及されていました。

仮定の話です。同志社に3強クラスの留学生が2人いるします。昨日の試合では、期待された末永、安田、松井というキーマンが、ほとんどラインブレイクできませんでした。それは、3人が完全にマークされたためです。たとえば、天理のように、6番、15番に留学生ペネトレーターが入ると、そこにディフェンスが集中しますので、末永、安田、松井はほぼフリーになります。上位3校は「留学生だけでなく、日本人も強い」とよく言われますが、ラグビーは数的ゲームです。留学生がいるチームとは数的条件が違うので単純な比較はできないでしょう。天理の14番久保選手は、松井より活躍しましたが、受けている圧力差は歴然です。
ディフェンスでも、BKの留学生がFW選手にスマザータックルを決めているのを見ると、その効果は計り知れません。特に、相手に留学生がいるチームに対するディフェンスは、留学生がいないと対応するのは不可能です。
さらに、留学生がいることで、普段の練習から相手チームの留学生のディフェンスの対策を練ることもできます。また、あの闘争心を見ると、チームへ与える影響が大きいと思います。以前、関東強豪校の選手と話した際に、留学生のことを師匠を言っていました。プレー以上にこの点が、多士済々な選手をまとめる上で、期待されるところかもしれません。

上位3校のように留学生抜きでも強いチームと勝負するには、留学生不在は現実的に厳しいとみます。



現場でできることは、今シーズンはほぼすべてやったのではないでしょうか。山神監督が言われるように「さらなるスピード」を追求はすべきです。学生もさらに自主性を高めて工夫をしてもらう必要があります。けれど、それは現場レベルの改善であって、改革ではありません。誤解を恐れずに書きますと、選手のポテンシャルはこれからの数年は下がっていきます。それを克服するには、入ってくれた選手に最高の環境を提供して強化する以外にありません。全部員平均で、筋肉アップで1年6〜7kg体重増するような強化です。入学時から卒業まで、体重がほとんど変わらない部員もいます。スピードが落ちるために体重は増やせないと言い訳している場合では無いです。
ここからは大学の仕事です。ラグビー部の幹部と連携して強化を進めないと、今シーズンの成績をピークになってしまいます。


現在の首脳陣が、同志社の課題を知り尽くせているでしょう。全員に続投して頂き、一貫した強化を進めて頂きたいです。



早稲田大学戦 2016/12/19記

強い相手に、最初からエンジン全開、いけるところまで全力で

天理戦から続く、このスタイルは好きです。これまでの、どの世代とも違う新しい同志社です。今年のチームは、ここ数年チームを支え続けてくれた東福岡からのGIFT、北川選手と才田選手の穴が埋められるかにかかっていました。バックロー以降はタレントが揃っています。

日本のラグビーは、2000年代以降のスクラムがやや軽視される時期を経て、2010年代は再びスクラム重視の時代です。その旗頭が、トップリーグで首位を独走するヤマハであり、大学では早稲田でしょう。昨年までの同志社もスクラムの強いチームでした。今年の早稲田は、ノーフック・スクラムが特徴で、相手が崩すまでというよりも、もっと積極的に相手のペナルティー誘発(押し負けた方がコラプシングを取られる)するスタイルです。明治戦のスクラムでシンビンを奪い、明治大の監督のコメントもあり、議論を巻き起こしたのは記憶に新しいです。

脱スクラムへ

しかし、今年のチームが出した答えは、スクラム強化ではありませんでした。山田主将のコメントにあるように、「体を大きくすることができないので、小さいことをアドバンテージにしたチーム」に仕上げてきました。フロントローの3人は非常によく動いて、フィールドプレーでは攻撃でも守備でも、大車輪の活躍です。今シーズンの大学では、どこにも負けない働きです。それに加えて、シーズンが深まるとともにスクラムも強くなってきました。本当に頭が下がります。
スクラムが強くなった要因は、商学部84年度生様(14734の投稿)が解説くださっています。要約すると、PR1とHOの側を両LOとFL6の3人でケアし、FL7野中がPR3の海士を押していることです。

この試合では、早稲田のルースヘッド・プロップがフランカーと連動して、海士にアングルぎみにプレッシャーを与えているようにも見えました。スクラムの駆け引きは、ルールすれすれのせめぎ合いで、トップレベルのラグビー経験者でも門外漢だと理解不能と言われます。スクラムには、試合の勝敗とは別の勝負、哲学があるとも言われます。
この試合、後半に入っても同志社はスクラムによく耐えます。タイトへヘッド・プロップの海士がよく耐えます。同志社PR3側が崩れたシーンもありましたが、どちらのコラプシングかは微妙に見えます。少なくとも、同志社のシンビンには見えません。「次やったらシンビン」の警告は、海士にではなく、アングルを付けてくる相手のルースヘッド・プロップにも与えるべきに感じました。相手のペナルティーを目的としたプレーは、ラグビーの本質から外れます。伝統的に競技の理解度の高い早稲田らしくないです。早く目覚めてほしいと思います。レフェリングには、冷静に従った選手たちを誇りに思います。


学生スタップ、ボランティアコーチの奮闘

同志社がテクニカルやAチーム以外のメンバーが、「ビート早稲田」を合い言葉に、スカウティングを行い、仮想ワセダの練習までして、練習台になったそうです。日本一である学生スタッフ、チームメイトの支えが、実を結ぶには時間はかかりませんでした。開始2分で相手ディフェンスを切り裂いた石田のトライ。密集からの山田のトライ。アンストラクチャーからの崎口の素早い判断トライで19−0。さらに、スカウティングの成果と思われるスペシャルプレーがでます。いつものタテタテヨコを封印して、末永、崎口、松井、安田とエース級を分厚く配置した大外に一気にボールを回して、最後は崎口からのラストパスをフルスピードで受けた松井のトライ。松井の見せ場ですが、決して個人技ではなく、組織でのトライです。さらに、安田が密集サイドを鮮やかに抜けてトライで、33−0で折り返します。
前半、特筆すべきは、零封したディフェンスです。まず、大越が相手SHにプレッシャーをかけます。レフェリーから注意を受けても、意にも介さず、クリーンな球裁きを阻止します。相手のライン攻撃では2人がかりで。追い込み役とでタックル役の呼吸が絶妙で、横から追い込み正面からタックル。タックル後はレックドライブで押し込んでいました。相手のセンターやフルバックの大きな選手を倒したことで、相手の強みを消しました。こういう流れでは、伝説になるタックルが飛び出します。スピードにのった相手スタンドオフへの、崎口のタックルには大いに盛り上がりました。
もう一つは、ラインアウト。前半最後のトライは、手前に合わせたラインアウトから。ラインアウトは昨年までの同志社の長年の課題でした。今年は見事に強みに変えています。中尾のスローが安定しているのと、天性の勘を持つ堀部の存在が大きいです。

後半も、FWとBKが一体となった連続攻撃から。中尾が抜けて、丸山にラストパス。縁の下の力持ちの丸山が主役になった瞬間です。永富兄のコンバージョンがよく当たっており、これで40−0。
ですが、ここから魔の時間が始まります。1トライ返された後、スクラムでの海士のシンビンが直接のトリガーとなり、7人スクラムを崩されて、さらに被トライ2。14人で戦う不利に加えて、ノットローラーアウェイ、ラインアウトのノットストレートと同志社には厳しい判定も続きました。センター付近でのノックオンは、膝に当たっていますが、手で取りに行っていますのでノックオンかと思われました。同志社もキックオフでミスをして、スクラムの多い時間帯になってしまいました。勝敗的には永富弟のトライがだめ押しになり、実質的には決着はつきました。ですが、流れは止められず、さらに2トライ奪われてしまいます。追い上げられて、少し後味の悪い後半になってしまいましたん。


1月2日に向けて

東海大学とは夏合宿が同じ北見です.。夏時点では14−26。彼我のスクラム差はわかりませんが、大きな差はないでしょう。東海は、留学生と日本人にも強い選手がいます。反面、個人が強いチームの常として、組織力がやや劣るのではないでしょうか。それでも、天理よりもディフェンスラインは強力そうです。
同志社の弱点として、この試合で関東勢にもスクラムが印象づけられたでしょう。しかし、東海はBKも強いチームですので、スクラムにどこまでこだわるかはわかりませんが、劣勢になるとスクラムに時間をかけてくるかもしれません。後半崩されるのは想定しておいた方が良いと思います。前半持ちこたえている内に、できるだけ貯金です。早稲田戦のようなトライラッシュは無理でも、ペナルティーキックも使って賢く点数を積み上げたいです。

レフェリーとの相性もありますので、東海大学のスカウティングに加えて、レフェリーのスカウティングを行ってほしいです。それを敢行するだけの十分なスタッフがいます。関東にたくさんいるOBに協力してもらっても良いでしょう。
1月2日に向けて、クボタ京葉グランドで調整するのかもしれませんが、上井草に負けない天然グランドです。若手OB、特に北川選手、才田選手、荻原選手、前川さんら歴代主将クラスが見守ってくれるでしょう。すべてを力に変えて、同志社の総合力で対抗してほしいです。


この試合のベストプレーヤーは試合に出ていない選手、スタッフでしょう。昨年の才田組から続く他大学では真似ができない同志社の形です。他大学には真似ができません。なぜなら、他大学のスタッフの多くは契約です。同志社は監督コーチ陣も学生も、無報酬、ボランティアです。同志社ラグビーが好きで集まった人たちです。このチームは強いです。





 [同志社ラグビー応援ホームへ]