第38回大学選手権

日付 12/16

12/23

  1回戦 2回戦
相手 帝京大

法政大

得点 46-20

17-10
29-15

33-41

14-13
19-28

場所 花園 花園
大瀧C   大瀧C  
表B 和田C 表B 和田C
尾崎C 田中C 尾崎C 田中C
堀越C   堀越C  
望月A 山本A 藤井B 望月A
田中C   田中C  
荻原A 飯尾A 奥薗B  
端迫B   端迫B 萩原A
二ノ丸C 竹山@ 二ノ丸C  
10 山下Bk   山下Bk  
11 辻C 吉田A 辻C  
12 徳野B   徳野B  
13 大石B   大石B  
14 馬場C   馬場C 吉田A
15 中矢B   中矢B  

感想

帝京大学 12/16記

同志社:帝京、立命館:日体の2試合を観戦しましたが、いずれも関西勢の勝利でした。大体も勝ち進んでくれて、東高西低に少し歯止めがかかったような気がして、うれしい1日でした。
2試合を観戦して思ったのは「ラグビーが強い」=「オフェンスが強い」という関西の暗黙の了解でいうなら、同志社、立命館とも相手との力の差はありました。しかし、ディフェンスだけみると下位チームにもかかわらず、関東勢の方が整備されており、今後に一抹の不安を抱きました。

○試合展開
☆ 前半
前半は長い時間帯、両チームとも得点が入らずに硬直した試合展開でした。同志社は攻撃力はあるが帝京の守備がよくなかなか1点突破ができないでいました。逆に帝京は攻撃力はないが同志社の守備も未整備。結果として、妙な均衡がとれて、ロースコアの前半でした。
同志社側からみると、ほとんど自陣でゲームがすすみ、ボールの支配率も相手の方が高かったように思います。リードして前半を終了したものの、3トライのうち2つはカウンター的なトライでした。自陣からは回さずにキックを多用していたことも、この結果につながったと思います。周りのオールドファンの皆さんもかなりフラストレーションをためていたようです。
☆ 後半
後半も前半と同じような出だしでした。しかし、この硬直した状況を見かねたのか、
後半10分、キャプテン田中洋がいつもより早く登場します。彼が流れを変えました。華麗にではなく、泥臭くも体を張って力で勝負をかけました。密集にはあえて入らずに、ラインに残って密集サイドの突破役を一手に引き受けていました。これは相手も読んでおり、2、3人がかりで止めに入っていましたが、倒れないし、ボールも渡さない。彼の責任感あふれるプレーには頭が下がりました。
これで迷いが吹っ切れたかのように徹底したFW勝負を挑み、これに勝ちました。圧巻はマイボールスクラムを回されて、相手ボールになったスクラム。これをめくり上げて回し、再びマイボールスクラムにしたプレーです。相手を完全に同志社ペースに巻き込んでいました。
FWが相手を圧倒するとBKも勢いづき、徳野のライン突破から
辻の独走トライも出ました。この時は昨年の明治戦の大西−辻のループを思い出すような花園の盛り上がりでした。

 今日印象に残った点
「力ずくの勝利」
今日の試合の印象はこの一言につきます。前半からの一進一退を打破した田中洋の突破。直接的にはこれにつきます。FWに体力差がある相手に対して、この戦法が一番堅いでしょう。

戦術的キック
しかし、ポイントは別のところにもあるように感じます。キックの多用です。この日のキックは有効なキックばかりではなく、カウンターを食らうシーンもしばしばでした。キックを蹴るたびにスタンドではため息が聞こえました。しかしながら、キックを使うことによって、FWが体力の温存ができ、後半スタミナ切れを起こさなかったのも事実。というより、ここに狙いがあるように思います。
SOにキック力のある山下を配していることもあり、この戦術は間違ってはいないと思います。しかし、今後はキックはタッチを切るか、キャッチされても早い潰しができないと、単なる攻撃権の放棄になりかねません。
※テレビ解説で藪木氏がキックをキャッチされた後のディフェンスを面で行う必要があると指摘されていました。(12/22追加)

 今後の課題
今日印象に残ったことがそのまま今後の課題にもなります。帝京相手には有効であった戦術が今後も通用するとは限らないです。逆にマイナスに働くことも考えられます。この観点から数点挙げさてもらいます。
○バックスのライン攻撃 ⇔ 力づくの勝利
今日はBKのライン攻撃がなかったといっても過言ではありません。去年の選手権の1回戦の専修戦でも、相手守備ラインに数的な優位な状況を作られて攻め倦ねることがありました。去年はこれを打破したのは大西、徳野、辻、中矢らのライン攻撃です。メンバー的には去年と大きく変わりありません。今後はFWで圧倒できる相手ではありません。いや、FWで圧倒するためにもBK攻撃とのバランスが必要です。単調な攻撃がもっとも対応しやすいはずです。関東勢の弱点分析は徹底しています。特に法政の突き刺さるようなタックルを仕掛けてくるでしょう。今年の本来の持ち味のFWとBKが一体となった攻撃が見たいです。

○フォロー
集散が遅いのは同志社の特徴と割り切っていいと思います。しかし、見事な単独突破でスタンドを沸かせるが、直後にターンオーバーされるというのでは意味はありません。相手に囲まれても田中洋なら倒れないかもしれませんが、それを過度に期待すべきでないでしょう。2人のフォローを伴ってパックをつくって攻めるという意識が望まれます。

○テンポ
今日は球出しが遅かったです。そのためにFW、BKが一体となった攻撃を阻まれていたと思います。球出しが遅れることにより相手ラインが整備され、ゲインラインをきれずに背走を余儀なくされ次のポイントへの集散が遅れ球出しが遅れるという悪循環になります。攻めているのに押されているというあの状態です。今のままではまだ厳しいでしょう。

 

 印象に残った選手
大瀧 : 地味な仕事を確実にこなしてくれます。フォローの早さは第1列とは思えません。前半の辻のカウンターをフォローしたのも彼でした。はずせない理由がよくわかります。
望月 : いつもながらのきびきびした動きに加えて、今日はプレーのやわらかさも感じました。きっと繊細な感覚の持ち主でしょう。
堀越 : スピード、パワー、スタミナを備えたオールマイティーなプレーヤーです。
以上、今日はFWの仕事人3人を挙げました。

 

この試合は良いところよりも悪い点が目立ったように思います。それでも、今年はやれるという思いに変わりはありません。この一戦で2回戦突破の絵が描けたように思います。足りないところはありますが、それほど多くはないです。しなければならない練習の種類は意外と少ないはずです。

同志社のメンバーが去った後、駐車場で帝京大学の選手、スタッフが長い時間円陣を組んでいました。話している内容も聞こえましたが、ここでは書くべきでないのでやめます。最後に主将が円陣の真ん中で深々と頭を下げた姿、彼らの真剣な表情を忘れることができません。1勝することの重さを感じました。彼らの分までなどと安易なことは言えませんが、この一戦から得たものを力にして成長していってほしいと願います。

(12/22追記)
後半のスクラムで、FLの位置にCTBの大石が入り田中正がSOの横に並んで突破を図るというプレーが何度かありました。(これは実は4、5年前に同志社が大学では初めて取り入れて、当時はレフェリーの認識不足から反則を取られ、選手権の勝敗をも左右したプレーです。)
スクラム時にプッシュをかけるかサイドを攻めるかの重み付けをしていました。まさに自在のスクラムコントロール。しかしながら、こうした戦法も相手に情報は入っているはずです。法政は対応してくるということ認識して、それを逆手に利用することが重要だと思います。

FWが互角になって、力が均衡して、本当のラグビーがはじまると思います。どんなタフな状況になっても、したたかに戦術を変えて対応する。そんな試合が見たいです。

 

法政大学 12/23記

今は技術論について云々するには冷静になっていないので、できるだけ淡々と試合経過について書き留めておきたいと思います。

○試合展開
☆ 前半
開始早々にSOとCTBの間を抜かれて、トライを奪われます。さらにPGを決められて、0−10。2回立て続けに内を抜かれたCTB大石がやや焦ったのか厳しいタックルにいきシンビンになってしまいます。(SO周辺の突破は法政の狙ったプレーで大石の責任ではないのですが)
10点ビハインドで14人での戦いを余儀なくされました。スタンドはイヤな雰囲気でしたが、冷静だったのは選手の方でした。FWの単独突破を止められても、ディフェンスではBKラインを抜かれても15人になるまでなんとか持ちこたえます。15人になってからは相手陣で試合を進められました。特にゴール前でのスクラムは相手がたまらず崩し何度もペナルティーを得ますが、すべてスクラム選択。連続して、5、6回は続いたでしょう。最後は認定トライ。スタンドも盛り上がりました。
その後、PGで3点返され再逆転されるも、前半終了間際には田中主将を投入して、FWラッシュから田中正がトライ。この試合は勝てるという雰囲気が花園を覆っての折り返しでした。

☆ 後半
前半のスクラムで消耗した方が負けると思われた後半。
まず、法政はBKの攻撃で1トライ取ります。さらに法政FWの波状攻撃にトライを許してしまいます。同志社も田中洋から藤井とつないで1トライ返すものの、法政にスクラムを押されて取り返されてしまいます。13点差という点差以上に優位に立っていたスクラムからトライを取られたことに不安を抱かされました。
それを振り払ったのが堀越がインターセプトから一気にゴール下に持っていったトライ。ラッキーでしたが、強くて速い万能選手・堀越の真骨頂ともいえるプレーでした。しかし、その直後に法政にトライを許して、また13点差。FWには明らかに疲れの色が見られ、BKディフェンスは修正が効かずに何度も同じ場所を抜かれる。もう、勝負はついたと感じました。
しかし、選手は切れていませんでした。ここから、この日の救いとも言えるようなトライが出ます。ゴール前の密集からBKに展開、逆サイドまでボールを運んで最後は中矢が持ち込んでトライ。この日、唯一決定力のあるバックスリーまでボールが回りました。FW、BKが一体となったすばらしい攻撃でした。これがもう少しだけはやく見られれば、展開も変わっていたように思います。

 

確かにFWの力の差はありました。前半のスクラムやドライビングモールは93年の明治戦を彷彿とさせました。ずっと見ているものでさえも、ここまで強いのかと驚かされました。理屈を抜きで、これには目頭が熱くなりました。
しかし、法政はしたたかでした。ゴールを背にしたスクラムでは崩されながらも、反則を犯しながらもかわし続けます。結局はトライを取られますが、相手得意の形で10分ほども攻められて1トライですんだのはむしろ幸いと感じたかもしれません。この攻防で体力の消費が大きかったのはスクラムが生命線とばかりに必死で押し続けた同志社だったようです。法政は先が見えているだけに堪えられたと思います。
後半はFWが互角になったため、ディフェンス力の差が点差になったように思います。法政は徹底的に相手の弱点をつきました。素早くBKにまわしては同志社ラインの甘いところを突いてきました。トータルとして、ゲームコントロールができていたのが法政と言えるでしょう。

法政との伊那での試合はよく覚えていますが、あの時よりも法政はディフェンスが厳しくなっていました。昨年の突き刺さるようなディフェンスが復活していました。さらには密集への集散の早さ、ボール奪取の巧みさなど、光るところが随所にあるチームに変貌していました。同志社側には9月の法政の残像が残って、これが災いしたかもしれません。

選手権に入って、「FWでいく」という時代に逆らう無茶にも思える方針で戦いました。FWが互角になってからが本当のラグビーと考える私にとっては今日は不満の残るゲームでもありました。しかし、チームコンセプトに忠実に戦ってくれた選手達を誇らしく思います。悔しい反面、潔さと爽やかさがあります。FWの威力は十分に披露してくれましたし、それは他のどのチームにもないものでした。
ここまでチームを引っ張ってきた田中主将、関西リーグ前半ゲームリーダーを務めた堀越、後半の馬場をはじめ選手達には本当に感謝したいです。

 

(1/4追記)
準決勝で関東学院は法政を破りました。録画で少し見ましたが、スピードで関東学院の方が上回っていたようです。関東学院の場合のスピードは個人の接点での当たりの強さ、忠実なフォロー、基本技術レベルの高さ、スタミナ、そしてメンバーのゲームプランの理解度の高さに裏付けられた試合展開の早さです。チームが頭脳を持った生き物みたいです。また、早稲田にも共通しますが、地味に見える基本技術が如何に大切かを感じました。何気ないダウンボール一つに、凝縮されたチーム力が表れているように思いました。習得にどれほどの時間を費やしたのだろうと考えると、彼らが練習している姿が浮かんで頭が下がる思いでした。

ここで、改めて今シーズンのチームに対する思いを記したいと思います。十分に期待に応えてもらったシーズンでした。しかし、昨年以上に期待していただけに思いは複雑です。

昨年、一昨年は大西将太郎氏という絶対的な存在がいました。FWは彼にボールを生きた球を供給するという意識で、その強さを発揮していたと思います。その意識で過ごした2年間。「この人ならなんとかしてくれる」という存在がいた2年間。去年ならSHからSOへのパスが繋がらなかったら、FWはまだ生きた球が行っていないと自らのプレーを高めることに専念できたはずです。BK陣も同じでしょう。ポジション的にもチームの中心である絶対的な存在は自分のプレーを写す鏡であったはずです。
その存在が無くなった今年は道しるべがないまま航海に出てしまった帆船のような印象を受けました。もちろん、いま思えばという話であり、今の時点でこういう表現をするのは失礼がすぎるのは承知です。

そんな中で田中洋主将はまずは体力重視という方針を打ち出しました。昨シーズンの準決勝での敗因をフィットネス不足と判断して、夏合宿は体力トレーニングを中心にした判断は見事といえるでしょう。私のような外部の人間が批評するのは簡単ですが、リーダーがそのチームがおかれた状況の中で決断していくのは容易なものではないと察します。それだけに雰囲気に流されなかった夏の決断はすばらしかったと思います。

FWを中心とした戦術
FWでゴリゴリいく戦術は以前に「時代遅れ」と書きましたが、実はこれを避けては関東の大学相手ではラグビーになりません。法政も、関東学院も密集にはなるべく人数をかけないで、FWの選手も横一列に並んだラインディフェンスをひいてきます。まずこのディフェンスラインを崩さないことには何も始まりません。ほとんどのチームがまずch0、1をつくことで少しでもゲインを切って、相手ラインの人数を減らしにかかります。昨シーズンの同志社も例外ではありませんでした。
ただ、時折見せる展開がWTBまでボールが回らなかったこともありますが、密集サイドの攻撃に終始するようになると相手のディフェンスが密集に寄っていまいます。このため、第3列のアタックが止められていました。例えファーストタックルをかわしてもカバーがいるので大きなゲインができなくなり、攻撃に非常に時間がかかってしまいました。
リーグ戦ではもう少しFW、BKが一体となった攻撃でした。とりわけ、FW(の中でも重量級)の選手が密集から離れたWTBより外側の位置で待機して、相手FWのいないところをFWでつく攻撃は非意図的な面はあるにしてもおもしろいアイデアだと思いました。どちらも、FWのスタミナの消耗を防ぐ方法と思いますが、ボールをグランドの横方向に動かす後者の方が、相手を崩すには有効であると感じます。
今後のFW
過去2年の選手権での敗因もFWが予想外に押せなかったことであったように思います。(時間があれば過去2年の選手権の観戦記を一読ください) 今シーズンは敗因をFWの押しの問題にしては進歩は無いでしょう。FWが強いからこそBKが生きるというのは一面の真理ですが、FWの強さが互角の相手にも勝たなくてはなりません。もし、FW、BKが一体となった攻撃を目指すなら、FWに必要なのはスタミナかもしれません。たとえ強さを犠牲にしても。

記録のために、いろいろなところで敗因として挙げられている項目を並べておきます。ただし、技術的な問題だけに絞ります。
 @スクラムが押せなかった(特に後半)
 Aラインアウトからの相手プッシュに対応できなかった
 BBKのラインディフェンスの弱さ、タックルの弱さ
 CFWの集散の遅さ
 DHBの展開能力不足
 ETBの決定力不足、個々の強さ不足
 F攻撃のオプション不足
Fについて、細かい内容になりますが、スクラムなどからブラインドサイドを使った攻撃があればおもしろかったように思います。例えば、「左8→9」あるいは「左8→11」が有効ではと思いました。

しかし、スキルよりも大きな問題があるように思います。
完勝した帝京ともう一度対戦したら、同じような結果が出ただろうか。あるいは法政と1回戦で対戦していたら。と考えると、どちらも違った結果になったような気がします。帝京はあれほどFWで来るとは予想していなかったでしょう。法政は帝京戦の分析から同志社を丸裸にしていたはずです。いくら、スキルを高めても、完全に戦法を読まれたら対応されてしまうと思います。総合力のあるバランスのとれた戦法であればともかく、極端な戦法の場合はそうだと思います。スキル的にはどのチームも大きな差があるようには思えません。勝つためには相手に応じて戦術を変えていく必要があると思います。

試合前に目指したラグビーができたという意味は小さくないです。勝敗とは別の次元で評価されてしかるべきだと思います。しかし、シーズン前に目指したチームと比べて、最終戦でのチームの姿がどのようなものであったかも検証する必要があるでしょう。チームの方向性も2年前とは違うはずです。チームを理想型に近づけるプロセスにおいて、できたこととできなかったことを明確にしてもらいたいと感じます。そこからしか、来シーズンは始まらないような気がします。
チームは継続するものです。今シーズンも進化の段階です。選手、スタッフで考えぬいたラグビーを今年も見せていただきたいと期待しています。

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